映画『サムライマラソン』をご存知でしょうか。
江戸時代に行われていた「安政遠足(あんせいとおあし)」をもとにした作品で、日本におけるマラソンのルーツのひとつとも言われる出来事が描かれています。
この映画を観ていて、姿勢治療家としてとても気になったことがあります。
それは、登場人物たちの「走り方」です。
侍の格好をして、わらじを履いて走っているのに、身体の使い方が現代のランニングシューズの走り方になっている場面が見えたのです。
もちろん映画として楽しむ分には問題ありません。
ただ、身体の使い方という視点で見ると、ここにはとても大切なヒントがあります。
それは、履いているものが変わると、走り方も変わるということです。
目次
昔の日本人は、どのように走っていたのか
江戸時代、現代のようなランニングシューズはありませんでした。
多くの人が履いていたのは、わらじや草履です。
わらじは、足を守る最低限の役割はありますが、現代の厚底シューズのようなクッション性はありません。
つまり、かなり裸足に近い状態です。
裸足に近い状態で走ると、かかとから強く着地することはできません。
もし裸足で石の多い道を走るとしたら、どうでしょうか。
おそらく、かかとからドンと着地する人はいないと思います。
自然と足裏全体、もしくは足の真ん中あたりで、そっと地面をとらえるような着地になります。
これが、裸足やわらじに近い走り方です。
わらじの走り方は、足裏全体を使う
わらじで走る場合、現代のランニングシューズのように、かかとのクッションに頼ることはできません。
そのため、足裏全体を使って地面に触れる必要があります。
足の指、足裏、足首、ふくらはぎ、股関節までが連動し、身体全体で衝撃を受け止めます。
これは、身体にとって非常に自然な使い方です。
足裏が地面の情報を受け取り、その情報に合わせて身体が反応する。
石がある場所では強く踏まない。
滑りやすい場所では足を置くように着地する。
凸凹した道では、足首や膝、股関節が自然に調整する。
このように、裸足やわらじに近い状態では、足そのものがセンサーとして働きます。
現代のシューズは、かかと着地をしやすくする
一方で、現代のランニングシューズにはクッションがあります。
特にかかと部分が厚く作られている靴では、かかとから着地しても衝撃を感じにくくなります。
もちろん、シューズのクッション性にはメリットもあります。
足を保護する。
長い距離を走りやすくする。
アスファルトの衝撃を和らげる。
こうした役割はとても大切です。
ただし、問題は「クッションがあるから、身体の使い方が雑になってしまうこと」です。
裸足なら絶対にしないような、強いかかと着地をしてしまう。
足裏の感覚が鈍くなり、地面を丁寧にとらえなくなる。
膝や腰に衝撃が伝わりやすくなる。
こうした走り方を続けていると、ランニングによる膝痛、足底筋膜炎、シンスプリント、腰痛などにつながることもあります。
裸足で岩場を走るなら、かかとからは着地しない
走り方を考えるときに、一番わかりやすいのは裸足の感覚です。
例えば、裸足で石の上を走ってくださいと言われたら、どんな走り方になるでしょうか。
おそらく、足を大きく前に出して、かかとからドンと着地することはしないはずです。
足を身体の真下に近い位置へ置く。
足裏全体で地面を感じる。
衝撃が少ないように、そっと着地する。
足首や膝を柔らかく使う。
自然とこうした動きになります。
この感覚は、ランニングフォームを考える上でとても大切です。
走り方を頭で難しく考える前に、まず「裸足ならどう着地するか」と考えてみる。
それだけで、身体にとって無理の少ない走り方が見えてきます。
足は本来、もっと使える構造をしている
足は、ただ身体を支えるだけのものではありません。
足の指、足裏のアーチ、足首の動き、ふくらはぎの伸び縮み。
これらが連動して、立つ、歩く、走るという動きを支えています。
しかし、現代人は靴に守られすぎて、足の機能を十分に使えていないことがあります。
特に、硬い革靴やローファー、足幅に合わない靴、クッションが強すぎる靴を長時間履いていると、足の指が動きにくくなります。
足裏の感覚も鈍くなります。
その結果、本来なら足で受け取るはずの地面の情報が少なくなり、膝や腰、背骨で無理にバランスを取ることになります。
姿勢の問題は、背中や腰だけで起きているわけではありません。
足元から始まっていることも多いのです。
子どもの靴選びは、身体づくりにも関わる
大人だけでなく、子どもの靴選びもとても重要です。
小学生や中学生の時期は、身体の使い方を覚える大切な時期です。
この時期に、足の指が動かない靴、足幅に合わない靴、硬すぎる靴を履き続けると、足本来の機能を育てにくくなります。
本来であれば、子どもたちにはもっと足裏を使える環境が必要です。
校庭を裸足で走る。
足指が自由に動く靴を履く。
足裏で地面を感じながら歩く。
こうした経験は、単なる運動ではありません。
姿勢、歩き方、走り方、バランス感覚、身体の土台づくりにつながります。
制服に合う靴であっても、足にとって良いものは作れるはずです。
見た目だけでなく、身体の機能を考えた靴が、もっと増えてほしいと思います。
裸足ランニングが注目される理由
近年、裸足ランニングやベアフットシューズに関心を持つ人が増えています。
これは、単に「裸足で走るのが流行っている」という話ではありません。
多くの人が、現代の靴に頼りすぎた走り方に疑問を持ち始めているのだと思います。
裸足に近い状態で走ると、足裏の感覚が戻ります。
地面の硬さ、傾き、滑りやすさ、着地の強さ。
こうした情報が足裏から入ってきます。
すると、自然と着地が丁寧になります。
無理に大股で走るよりも、身体の真下に足を置くようになります。
かかとから強く突っ込むよりも、足裏全体で地面をとらえるようになります。
これは、怪我を防ぐためにも大切な感覚です。
ただし、いきなり裸足で走るのは危険
ここで注意してほしいのは、裸足や薄い靴が良いからといって、いきなり長距離を走らないことです。
現代の靴に慣れている足は、足裏やふくらはぎ、アキレス腱が十分に使えていないことがあります。
その状態で急に裸足ランニングを始めると、足裏やふくらはぎを痛める可能性があります。
大切なのは、段階を踏むことです。
まずは室内で裸足になる。
足指を動かす。
短い距離を裸足で歩く。
芝生や安全な場所で軽く歩く。
薄い靴を使う時間を少しずつ増やす。
身体は、急に変わりません。
足の感覚を取り戻すには、少しずつ慣らしていくことが大切です。
走り方は、靴だけで決まらない
ランニングフォームを改善したいと考えると、多くの人はシューズを変えようとします。
もちろん、靴選びは大切です。
しかし、靴だけを変えても、身体の使い方が変わらなければ、根本的な改善にはなりません。
大切なのは、足裏で地面を感じること。
骨盤を立てること。
股関節を使うこと。
身体の真下で着地すること。
背骨をつぶさず、呼吸できる姿勢で走ること。
靴はあくまで道具です。
その道具をどう使うかは、身体の使い方で決まります。
サムライマラソンから学べること
映画『サムライマラソン』は、時代劇としても楽しめる作品です。
ただ、姿勢治療家の視点で見ると、走り方、足元、身体の使い方を考えるきっかけにもなります。
昔の日本人は、現代人よりも身体能力が高かったのか。
それは単純には言えません。
しかし、少なくとも現代人よりも、足裏を使う環境は多かったはずです。
舗装されていない道を歩く。
わらじや草履で移動する。
生活そのものの中に、身体を使う機会がある。
そうした環境が、自然と足や股関節、体幹を育てていた可能性は高いと思います。
現代は便利になりました。
その一方で、身体を使う機会は減っています。
だからこそ、意識して身体の機能を取り戻す必要があります。
まとめ。足元を変えると、走り方が変わる
走り方を変えたいなら、まず足元を見直すことです。
わらじや裸足に近い状態では、かかとから強く着地することはできません。
足裏全体で地面を感じ、身体の真下に足を置き、衝撃を身体全体で受け止める必要があります。
現代のシューズは便利ですが、足の感覚を鈍らせることもあります。
だからこそ、靴に頼りきるのではなく、自分の足を使える身体を取り戻すことが大切です。
裸足で走る必要はありません。
まずは、自分の足裏を感じること。
足指が動く靴を選ぶこと。
かかとから突っ込む走り方になっていないか気づくこと。
足元から姿勢を整えること。
走ることは、単なる運動ではありません。
身体の使い方を見直す時間です。
足元が変わると、姿勢が変わります。
姿勢が変わると、走り方が変わります。
走り方が変わると、人生の動き方まで変わっていきます。
身体を見直す時間は、人生を見直す時間です。
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