「姿勢を良くしよう」と思ったとき、
どこの筋肉を意識していますか?
背中でしょうか。
お腹でしょうか。
それとも、肩を後ろへ引くことを意識しているでしょうか。
姿勢を考えるうえで大切な筋肉は一つではありません。
身体は多くの筋肉や関節が連動して動いています。
その中でも、僕自身が身体を使うときに意識している筋肉の一つがあります。
あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、肩甲骨と胸郭をつなぎ、腕や肩甲骨を動かすうえで重要な筋肉です。
この記事でわかること
- 前鋸筋とはどこにある筋肉なのか
- 前鋸筋と肩甲骨の関係
- なぜ姿勢を考えるときに前鋸筋を意識するのか
- 壁を使って前鋸筋を感じる方法
- 筋肉より先に「背伸び」をおすすめする理由
目次
前鋸筋とは?肋骨と肩甲骨をつなぐ筋肉
前鋸筋は、身体の横側にある筋肉です。
肋骨の外側から始まり、肩甲骨の内側へつながっています。
見た目は、肋骨の横にギザギザと筋肉が並んでいるため、僕は患者さんへ説明するときに、
「カニの足のように肋骨についている筋肉」
とイメージしてもらうことがあります。
前鋸筋の大切な役割の一つが、肩甲骨を胸郭に沿わせながら動かすことです。
腕を前へ伸ばしたり、腕を上げたりするときには、肩関節だけが動いているわけではありません。
肩甲骨も胸郭の上を滑るように動いています。
前鋸筋の主な働き
✓ 肩甲骨を胸郭に沿わせる
✓ 肩甲骨を前方へ動かす
✓ 腕を上げるときの肩甲骨の動きを助ける
✓ 肩甲骨を安定させながら上半身を使う
つまり前鋸筋は、腕と体幹をつなぎ、肩甲骨がスムーズに働くために重要な筋肉の一つなのです。
四足で身体を支える動物を見ると、前鋸筋の役割が分かりやすい
前鋸筋の役割をイメージするとき、四足で立つ動物を考えると分かりやすくなります。
人間でいう「前脚」に体重がかかった状態では、肩甲骨周辺の筋肉が胸郭を支えています。
人間でも、腕立て伏せの姿勢を取ると同じように両手から身体へ力が伝わります。
床や壁へ手をついて身体を支えると、前鋸筋の働きを感じやすくなります。
そのため、前鋸筋を意識するトレーニングとして、腕立て伏せに近い動作がよく使われます。
僕が前鋸筋を意識するようになった理由
僕自身は、前鋸筋をかなり意識して使っています。
理由の一つは、これまで自分がしてきたスポーツにあります。
子どもの頃はサッカーが中心でした。
野球のように投げる動作や、ラケット競技のように上半身を大きく使う競技を長く続けてきたわけではありません。
そのため、自分の身体を見ていくと、
「ここは今まであまり上手に使ってこなかったな」
と感じる筋肉があります。
前鋸筋は、僕にとってその一つでした。
そこで腕立て伏せや壁を使った運動をしながら、肩甲骨周辺の動きを確認するようになりました。
すると運動後に、肩まわりが安定し、身体を起こしやすい感覚を得ることがあります。
ただし、「前鋸筋を鍛えれば全員の姿勢が良くなる」という意味ではありません。
スポーツ歴、仕事内容、身体の柔軟性、普段の動作によって、使いやすい筋肉・使いにくい筋肉は一人ひとり違います。
良い姿勢は「一つの筋肉」だけでつくるものではない
ここは、とても大切なところです。
姿勢は、前鋸筋だけでつくられているわけではありません。
肩甲骨の周りだけを見ても、僧帽筋、菱形筋、広背筋など、多くの筋肉が関わっています。
さらに、
✓ 足
✓ 股関節
✓ 骨盤
✓ 背骨
✓ 胸郭
✓ 肩甲骨
✓ 頭
まで、身体全体がつながっています。
良い姿勢とは、一つの筋肉を力いっぱい緊張させてつくるものではありません。
必要な場所が必要なタイミングで働き、身体全体が連動できることが重要です。
前鋸筋を感じてみよう|壁を使った簡単チェック
前鋸筋を自分の身体で感じてみたい方は、壁を使って試すことができます。
壁を使った前鋸筋の感覚づくり
1.壁の正面に立つ
壁から腕が届く程度の位置に立ちます。
2.肩の高さ程度で両手を壁につく
肘は無理のない範囲で伸ばします。
3.壁を軽く押す
手を壁から離さず、身体を押し返すような感覚をつくります。
4.脇の下から肋骨の横を意識する
肩をすくめず、脇の下から胸の横あたりが働いているかを感じてみてください。
音源では、さらに両手を壁へ置いたまま、右手は右方向、左手は左方向へ回すような力を加えることで、脇の下周辺の筋肉を感じる方法も紹介しました。
ここでの目的は「強くひねること」ではありません。
前鋸筋を含め、肩甲骨周辺の筋肉が働く感覚を自分の身体で確認することです。
慣れてきたら「壁腕立て」にしてみる
筋肉の感覚が分かってきたら、壁腕立てにしてみる方法もあります。
壁腕立てのやり方
1.壁に両手をつく
2.頭から足首までを大きく崩さない
3.足首を支点に身体全体を壁へ近づける
4.肘を曲げながら、ゆっくり身体を壁へ近づける
5.壁を押して元の位置へ戻る
床で行う腕立て伏せより負荷を調整しやすいため、運動習慣が少ない方でも取り組みやすい方法です。
壁から足を遠ざけるほど負荷は上がり、壁に近づくほど軽くなります。
痛みがある場合は無理をしないでください
肩、首、腕などに痛みがある方や治療中の方は、自己判断で無理に行わないでください。
運動中に痛みやしびれが出た場合は中止してください。
腕立て伏せは「腕だけを鍛える運動」ではない
「腕立て伏せ」という名前から、腕の筋肉を鍛える運動だと思われがちです。
もちろん、腕や胸の筋肉も使います。
しかし身体全体を見ると、
✓ 手で床や壁を押す
✓ 肩甲骨を安定させる
✓ 胸郭を支える
✓ お腹や体幹で身体を保つ
✓ 足まで含めて身体全体を一直線に近づける
という全身運動です。
筋肉を一個ずつ鍛えるだけでなく、「身体をつなげて使う」という視点を持ってみてください。
それでも僕が、まず「背伸び」をおすすめする理由
ここまで前鋸筋について詳しく書いてきました。
では、
「姿勢を良くするには、みんな前鋸筋をトレーニングすればいいのか?」
というと、僕はそうは考えていません。
僕が普段、まずお伝えしているのは「背伸び」です。
なぜなら、筋肉の使い方には個人差があるからです。
野球を長くしていた人。
サッカーをしていた人。
水泳をしていた人。
ほとんど運動をしてこなかった人。
仕事で腕をよく使う人。
一日中パソコンを使っている人。
身体には、それぞれ違う履歴があります。
だから、誰にでも始めてもらいやすい基本動作として「背伸び」を大切にしています。
まず身体を上方向へ伸ばし、自分の軸を確認する。
そのうえで、必要に応じて筋肉や身体の構造を詳しく学んでいく。
この順番でいいと思っています。
あなたの身体にも「使ってきた履歴」がある
身体は突然、今の状態になったわけではありません。
子どもの頃の遊び。
学生時代のスポーツ。
仕事。
趣味。
ケガ。
毎日の座り方や歩き方。
その積み重ねが、今の身体の使い方につながっています。
「自分は、これまでどんなふうに身体を使ってきただろう?」
と考えてみることも、自分の身体を知るための大切な第一歩です。
オフィスの壁も「身体を整える場所」になる
運動をするとなると、
「ジムへ行かなければ」
「着替えなければ」
「30分くらい時間を取らなければ」
と思ってしまう方もいます。
でも、身体を動かすきっかけは身近なところにあります。
例えば仕事の合間に
・背伸びをする
・壁に手をついて身体を動かす
・肩甲骨を動かす
・少し歩く
これなら、特別な道具がなくてもできます。
オフィスの壁一枚でも、使い方次第では身体について学ぶ場所になります。
前鋸筋を知ることは、自分の身体を知る入口
前鋸筋という筋肉の名前を、一生懸命暗記する必要はありません。
大切なのは、
✓ 肩甲骨は身体のどこにあるのか
✓ 肩甲骨はどのように動くのか
✓ 腕と体幹はどうつながっているのか
✓ 自分はどこを使いやすく、どこを使いにくいのか
を、自分の身体で少しずつ理解していくことです。
解剖学は、専門家が骨や筋肉の名前を覚えるためだけのものではありません。
自分の身体をより上手に使うための「取扱説明書」として知ると、毎日の立ち方、歩き方、運動の見え方まで変わってきます。
まずは背伸び。
そして興味が出てきたら、今回の前鋸筋のように、一つずつ身体の仕組みを知ってみてください。
自分の身体を知ることは、一生自分の身体を使っていくための大切な学びです。
姿勢が変わると、人生が変わる。
身体を見直す時間は、人生を見直す時間である。
姿勢治療家®
仲野孝明
前鋸筋と姿勢についてよくある質問
参考資料
・NCBI Bookshelf「Anatomy, Thorax, Serratus Anterior Muscles」
・Neumann DA, Camargo PR. Kinesiologic considerations for targeting activation of scapulothoracic muscles – part 1: serratus anterior.
・Kang FJ, et al. Serratus anterior and upper trapezius electromyographic analysis of the push-up plus exercise.
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投稿者プロフィール

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姿勢治療家Ⓡ 創設者
【姿勢が変わると、人生が変わる。】
Your Posture makes Your Life.
可能性を最大限に引き出します。
仲野孝明公式ブログにて役立ち健康情報や姿勢が人生にもたらす影響
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